応用微分方程式論(大学院・前期)
このページは, 上記講義の受講生との情報交換に使うものですが,
数学科の www ブラウザ環境との交信が良好でなく,このページが
良く見えないことがあるそうですので, 必要なファイルは
xx999.xx.is.ocha.ac.jp (IP 133.65.112.1) ~kanenko/Ade の下にも
置いておきますので,受講生は必要なら情報科学科の市川先生に申し出て
3号館5階にあるこのホストのアカウントを取得し,ftp 等で必要なファイルを
自分の使用環境に取り込んで下さい.
講義要項と教科書・参考書の紹介
本講義は微分方程式の実用的側面を毎年テーマを選んで解説するものであり,
本年度のテーマは偏微分方程式の逆問題とする.
逆問題とは, 文字通り普通の問題とは逆方向の問題設定のことである.
偏微分方程式の場合で言えば, 方程式が与えられたときにそれを解くのが
普通の問題(順問題)であるのに対し,
逆問題とは, 解のいろいろな性質を既知として,
方程式(の係数など)を決定する問題となる.
もとの順問題が適切 (well-posed) に解ける場合ほど, 逆問題は非適切 (ill-posed)
となる. 逆問題の一つの中心的テーマは, この非適切性を乗り越えて如何に
妥当な計算結果を得るか, という『正則化』のテクニックである.
本講義ではおおむね A. Kirsch 著
『An Introduction to the Mathematical Theory of Inverse Problems』
(Springer, Applied Mathematical Series 120)
に基づき, この理論の基礎的部分を解説する.
偏微分方程式の話は終りの方でやっと出てくるので, 正則化の基本の解説だけで
終ってしまうかもしれないが, 無理に急がないでゆっくりやる予定である.
演習では, 簡単な積分方程式について実際のプログラミングを実習して
もらう予定である.
99年度講義の概要
- 第1回(4月21日):逆問題について簡単に紹介し空間1次元熱方程式の
話をした.
- 第2回(4月28日):空間1次元波動方程式の変数分離法と差分法による
解法の話をした.
- 第3回(5月12日):空間2次元波動方程式の変分法による導出法を紹介した.
- 第4回(5月19日):Abel 積分方程式に導かれる逆問題の紹介をした.
- 第5回(5月26日):適切な問題の代表例として, 波動方程式の
エネルギー不等式, 熱方程式の最大値原理などを導いた.
- 第6回(6月2日):Poincar\'e 不等式と Green の公式の証明をし,
非適切問題の計算可能性の原理を熱方程式の逆問題について説明した.
- 第7回(6月9日):非適切問題の計算可能性の抽象論を
一般のコンパクト作用素で解説した.
- 第8回(6月16日):正則化の章に入り, 高周波フィルターの近似度の
計算をした.
- 第9回(6月23日):前回の続きをし, Tihonov の正則化の理論を紹介した.
- 第10回(6月30日):Landweber の反復法の正則化理論としての解釈を
紹介した.
- 第11回(7月7日):Morozov の Discrepancy principle の紹介をした.
- 第12回(7月14日):Landweber 法の停止則と CG 法について紹介をした.
これで今年の講義は完了です. 単位の欲しい人は9月末までに講義中に述べた
レポート問題のいずれかを解いて提出してください.
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