情報代数学(3年生・春学期)
講義要項と参考書の紹介
情報代数学は学科創立時より存在した科目ですが, 毎年開講されて来た符号理論と異なり今まで開講されずに来ました.
符号理論は誤り訂正符号の理論を解説するためのものですが, 小生がその講義を担当するようになって以来,
学科発足当時に比べてて世の中における暗号の役割が大幅に増大し日常化していることを考慮し, 次第に暗号の解説を増やしてきました.
しかし, 1学期一コマの符号理論で誤り訂正符号と暗号を両方やるのは,
時間不足でどちらも表面的な内容で終わってしまうのは否めません.
そこで新カリキュラムの発足にともない, 符号理論とともに遊んでいたこの科目を活用し,
それぞれ誤り訂正符号と暗号を専門科目として十分なレベルの内容で講義できるようにしようということになりました.
ただし今年度はまだ過渡期として, 昨年十分に講義できなかった離散数学の内容を補う目的と, 暗号をやる金子研の学生に代数の知識を補う目的で開講されます.
大学院との共通講義として, 体の拡大の理論, ガロア理論,
有限体上の多項式の計算, 楕円曲線と代数幾何の初歩などを講義します. いずれも暗号の基礎に深く関わるものですが, 3年生として普通に暗号の基礎知識を身につけたい人は, 平行して開かれる符号理論を受講すれば十分でしょう.
とくに今年度は時間のやりくりの関係で藤代先生の画像基礎論と重なっていますので,
一般の3年生は藤代先生の講義を受講してください. (暗号でも, 電子透かしや画像ステガノグラフィなどを研究したい人には, 画像解析の基礎は必須です.)
なお, 大学院の講義としては, この講義は“応用代数学特論”という新設科目になります. 従ってM2の学生は受講しても単位にはなりませんのでご注意ください.
主な目次
- 体とその拡大の理論
- ガロア理論, 方程式の可解性と作図問題
- 有限体とその拡大体での計算法
- 有限体上の代数曲線の理論
- 楕円曲線と楕円曲線暗号
参考書
ガロア理論の教科書としては, 藤崎源二郎先生の代数的整数論入門 上下 (裳華房)
がガロア群の計算法が詳しくていいですが, 入手が難しいかもしれません.
その他適宜, 紹介してゆきます.
出席と評価
成績評価は出席とレポートによります.
【実際の講義概要と予定】
- 4月17日(木):第1回 体論の復習
ガロア理論の動機付けを与えた古来の問題,
3大作図問題と5次方程式の根の公式の探求などの話をし,
ガロア群と正規拡大の定義まで行いました.
- 4月24日(木):第2回 有限次拡大
有限次拡大の構造, 有限次拡大が単純拡大に帰着する話などをしました.
- 5月1日(木):第3回 ガロアの理論
中間体と部分群の対応の話をしました.
- 5月8日(木):第4回 ガロア理論の基本定理
中間体と部分群の対応の話を完成させ, 円分体の Galois 群の計算をしました.
- 5月15日(木):第5回 代数方程式の可解性
3次および4次の代数方程式の可解性の話をし, Galois 群と可解性の関連の説明に入りました.
- 5月22日(木):第6回 代数方程式の可解性2
ガロア理論の基本定理2の証明を完成し, 円分拡大の実例を計算しました.
- 5月29日(木):第7回 作図問題
5次以上の代数方程式には根の公式が無いことを証明し,
その後作図問題の解説をしてガロア理論を一区切りさせました.
- 6月5日(木):岡本先生の集中講義で卒研ゼミをつぶさないため (^^;),
この講義を休講にしてゼミをやります.
という予定でしたが, 結局風邪を引いてしまい, ゼミも有りませんでした. (;_;)
- 6月12日(木):第8回 風邪で寝ながらでも準備できたお話として, 終結式と判別式の紹介をしました.
- 6月19日(木):第9回 有限体1
最初に最小分解体や代数的閉包の存在証明をした後, 有限体の一般論に入りました.
- 6月26日(木):第10回 有限体2
任意の m に対し素体上の m 次の規約多項式が存在する証明をしました.
- 7月3日(木):第11回 有限体3
有限体の Galois 群を調べ, 有限体が完全体であることの証明の直前までゆきました.
- 7月10日(木):第12回 平方剰余の話をしました.
- 7月17日(木):第13回 平方剰余の相互法則の証明を完成させた後,
平方剰余の暗号への応用の話をしました.
前回やるといってすっかり忘れた有限体の理論の残りをやりました.
次の週は振替月曜になるので, この講義はこれでおしまいです. 単位欲しい人は
知らせてください.
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