暗号と符号(三年生・冬学期; 木曜34限)
このページは, 『暗号と符号』の講義の受講生との情報交換に使います.
講義要項と教科書・参考書の紹介
ディジタル情報の伝達は自然に生ずるノイズによりゆがめられ,
アナログ情報の場合と異なり,それによって致命的な痛手を被るのが普通です.
また,秘密情報をそのまま送ったら,他人に読まれてしまい,更には,
悪意のある第三者によって,内容がわざと変更されてしまう恐れもあります.
この講義では情報通信を安全かつ正確に行うための技術を学びます.
現代情報社会における暗号の重要性は説明を要しないでしょう.
特に,公開鍵暗号とその関連技術は,今やそれなくしてはネットワークを
通した経済活動を
不可能にするくらい社会に浸透しています.
この講義では,暗号の歴史から始め,その理論的基礎と主な現代暗号の仕組み
をていねいに解説します.更に,暗号技術を用いて,ネットワーク越しに
安全かつ公平にじゃんけんをする方法など,現代のマジックとも言える
種々の暗号プロトコルの解説もします.
誤り訂正符号とは、伝達内容に少し余分なデータを加味することにより, 受信側で
多少の誤りは取り除いて正しい情報を復元することを可能にする数学的手段を
研究するもので, 数学的理論がプログラミングの工夫などとは本質的に異なる
次元で役に立つことを示す良い見本です.
誤り訂正符号は, 衛星通信から CD の読み書きなど身近なところまで,
実際に用いられています. 符号理論の基礎は2年の情報理論の講義で学んで
いるので,この講義では,実用的な Reed-Solomon 符号の解説をします.この
符号はまた,暗号マジックの一つである高度な秘密分散にも応用されます.
参考書は不要ですが,
太田和夫・黒澤馨・渡辺治:情報セキュリティの科学, 講談社ブルーバックス
くらいの内容は就職試験を受ける前に身に付けておきましょう.
符号理論の参考書としては
内田興二:有限体と符号理論, 別冊数理科学, サイエンス社
を挙げておきます.
だいたいどんなことをやるかは, 今までの講義概要の記録を見てください.
講義内容はそのうち, 『暗号理論講義』,および『符号理論講義』として
僕の教科書シリーズから出版する予定です.
【実際の講義概要と予定】
- 10月1日(木):第1回 コードの話
コードに関する常識の復習をします.といっても,あまり急ぐと一人も
いなくなっちゃうので,今年は (その必要もなくなったので (^^;)
プロ養成モードじゃなく,暗号の常識を養ってもらう教養講義
として,ゆっくりやります.
angoup1.pdf第1回講義のプレゼン資料
(2009.10.21 22:23 修正版; uuencode の説明が不正確だったのをちひろちゃ
んに注意されて訂正しました).
- 10月8日(木): 午前6時半に東京都に暴風警報が発令中だったので
大学の規則により正式の休講となりました.講義予定は1週間平行移動されます.
- 10月15日(木):第2回 古典暗号入門.
古典暗号の解説をし, 解読法の説明をしました.
毎年,一番人気のある話題です.コナンに負けないように解読のレポート問題
も頑張りましょう!
angoup2.pdf第2回講義のプレゼン資料.
- 10月22日(木):第3回 現代の対称鍵暗号
バーナム暗号と DES の解説をし, 暗号の攻撃法や安全性の種類について
お話ししました.
angoup3.pdf第3回講義のプレゼンの pdf ファイ
ル
- 10月29日(木):第4回 公開鍵暗号入門
公開鍵暗号の仕組みについてお話しし, 因数分解の困難さに依拠した
RSA 暗号と, 離散対数問題の困難さに依拠した Diffie-Helman の鍵配送方式,
ElGamal 暗号について解説しました.
angoup4.pdf第4回講義のプレゼンの pdf ファイ
ル
- 11月5日(木):第5回 RSA 暗号の実装
RSA 暗号の実装に必要な,高速冪乗法, 拡張 Euclid 互除法,
擬素数生成の Miller-Rabin 法の解説をしました.
angoup5.pdf第5回講義のプレゼンの pdf ファイ
ル
- 11月12日(木):第6回 巨大素数と擬似乱数
前回の続きをやりました.群論の復習と中国人剰余定理, ならびにモンテカルロ
の写真も紹介しました.
angoup6.pdf第6回講義のプレゼンの pdf ファイ
ル
- 11月12日(木):第7回 認証と電子署名
公開鍵暗号の基本的な応用法である認証と電子署名のお話をしました.
OAEP と SSH, SSL の話もしました.
angoup7.pdf第7回講義のプレゼンの pdf ファイ
ル
- 11月19日(木):第8回 電話でじゃんけんをする方法
メンタルポーカーとコイン投げプロトコルの説明をし,
コンピュータで暗号通信とビジュアルなイメージ化の実装をお見せします.
実はちょっとだけ前回やったのですが,きりが悪いのでプレゼン資料は
今回の方にまとめました.
angoup8.pdf第8回講義のプレゼンの pdf ファイ
ル
- 11月19日(木):第9回 ビット預託・零知識証明・紛失通信
不思議な暗号プロトコルの紹介をします.
零知識証明は, 自分が大切な情報を持っていることを,内容を
伝えずに相手に納得させてしまう,最も不思議な技術です.
最後に,次回本格的にやる秘密分散の話にちょっとだけ入りました.
angoup9.pdf第9回講義のプレゼンの pdf ファイ
ル
- 11月26日(木):休講 日本気象学会秋季大会に参加してきます.
- 12月3日(木):第10回 秘密分散法
秘密情報を複数の人に分散して持たせるいろいろな方法を, 海賊の首領が
残した宝の地図を例に説明しました. その一環として誤り訂正符号の解説も
しました.
angoupa.pdf第10回講義の
プレゼンの pdf ファイル
- 12月10日(木):第11回 有限体の計算
閾値付き秘密分散法に使われた Reed-Solomon 符号や,
次週にお話しする AES 暗号の基礎となっている
有限体の計算法を復習します. 理論的な内容が主なので,
予習用にプレゼン資料を早めに置きます. (実際には黒板での講義です.)
angoupb.pdf第11回講義の
プレゼンの pdf ファイル (2009.12.10 0:01 修正版)
- 12月17日(木):振替月曜ですが,小口先生の講義の
代わりに渡辺先生の講義が入りました.
- 1月14日(木):第12回 AES 暗号の解説と対称鍵暗号の実装法
時間が大量に余ったので,最終回でもやり残す話題について簡単に紹介しました.
angoupc.pdf第12回講義の
プレゼンの pdf ファイル (講義時には勘違いしていましたが,
AESのSボックスはASCIIコード表とはXYが逆になっています. なので,行のま
まで合っていました.)
- 1月21日(木):休講 暗号の年次大会SCIS2010に参加してきます.
渡辺先生の補講はもう無いようです.
- 1月28日(木):第13回 マルチパーティプロトコル
マルチパーティプロトコルの解説をし, また種々の実用的なプロトコルの現実
的実装法の解説をしました.
angoupd.pdf第13回講義の
プレゼンの pdf ファイル
これで本年の『暗号と符号』の講義はおしまいです. 単位の欲しい人でまだ
レポートを出していない人は,提出期限は2月28日までとします.
紙媒体の場合は金子研実習室へ, メールの添付ファイルでも可. できそうに無
い人は相談に乗りますので,連絡してください.
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